森林空間における視覚的変化の定量分析とその脳波反応

この研究は、「森の中を歩いているときに見える景色の変化が、人の脳活動にどんな影響を与えるのか」を明らかにしようとしたものです。2つの異なる森林コースを選び、それぞれを歩くときに、木々の隙間から差し込む光(木漏れ日)の量や、その見え方がどう変化するかを数値で記録しました。同時に、参加者がコースを歩いている間の脳波(α波とβ波)も測定しました。 結果として、コースAを歩いた人はリラックスしているときに増えるα波が多く出ました。一方、コースBでは頭を使って考え事をしているときに強まるβ波が増えました。つまり、コースAは人を落ち着かせ、コースBは頭を活発にさせるような効果があったのです。 この研究は、これまで曖昧だった「森林に癒やされる感じ」や「森で考えが深まる感覚」を、データで示す手がかりとなるものです。つまり、自然の中で感じるリラックス効果や発想力の刺激といった価値を、客観的な数字で理解できるようになり、人々が森に求める意味や価値を新たな視点で捉える手助けになると期待されています。

〈オリジナルの論文はこちらから〉森林空間における視覚的変化の定量分析とその脳波反応:第一工科大学研究報告 (第35号), pp81-88, 2023