この研究は、建築空間を「客観的な数字」で理解するための新たな方法を提案しています。これまで、建築の雰囲気や特徴は、主観的な感想や写真に頼ることが多く、はっきりとした数字で示すのが難しいとされてきました。 そこでこの研究では、全周パノラマ画像とAIを組み合わせて、建築内部に見える要素(床、壁、天井など)を自動的に特定・分類します。使われているのは「セマンティックセグメンテーション」と呼ばれる技術で、画像中の各部分が何に当たるかをAIが判断します。その上で、各要素の面積比などを計算することで、空間の特徴を数値として表現できるようにしました。 実験では、学習データと同じ条件で撮影された画像を使うと、AIはかなり正確に空間要素を見分けられることがわかりました。ただし、撮影条件が変わると識別精度が下がってしまうという課題も見つかりました。 こうした手法が確立されれば、建築空間について「なんとなく」感じていた特徴を、はっきりした数字で示すことができるようになります。時間や季節、見る人の動きによる空間の感じ方の違いを定量的に分析できるようになり、建築のデザインや使われ方の改善につなげる新たな手がかりを生み出すことが期待されます。